GO WESTの乗車船録

公共交通機関に乗った記録を綴っています。

車線変更25時

深夜サイクリングの記録 2019.5.5

 

25:00

眠れない夜更け、夜風に吹かれようと自転車に乗ってあてもなく繰り出す。東西線の終電が妙典車庫に吸い込まれていく。妙典公園のスロープを上り、車庫への引き込み線を渡る。川沿いの舗装された道路を南へ走る。バーベーキューの残置物に虫がたかっている。ブレーキの音に驚いた猫が四方八方に逃げてゆく。高速道路の明かりに照らされ、行徳富士の輪郭がぼんやりと見えてくる。

堤防に腰掛けて、対岸のごみ処理施設から排出される煙を眺めた。5月の海風は気持ちいいね。

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猫が3匹います。わかりますか?

 

26:00

行き止まりを右手に曲がり、京葉線に沿ってしばらく進めば海へと続く道に出る。しかし、この日は工事のため通行止めとなっていた。港湾労働者に会釈をし、やむを得ず引き返す。高速道路から遠ざかるほど、虫の声が大きくなっていく。低水路に釣り人が数人見える。一番左にいる釣り人は大声でジャパニーズロックを歌っている。

その後しばらく走っていると、草むらのなかにぼんやりと光る何かが見えた。携帯電話の落とし物か、と近づいて手持ちのライトで照らしたが、何も見当たらなかった。もしかしてホタルだったかな、そうだったらいいな。こんな汚い水場にホタルなんている訳ないんだけどね。

京都に住んでいたころ、銀閣寺道の琵琶湖疏水にホタルが出現すると、サークル内でその情報がすぐに共有されて、みんなで見に行ったことを思い出した。僕の周りの京大生は皆寄り添って住んでいた。あの距離感は悪くなかったなあ。

 

27:00

篠崎水門を渡り、江戸川区へ。旧江戸川沿いをひたすら西へ走る。救急病院の病棟から光が漏れる。自転車のライトの音が響く。タクシーが追い抜いていく。交通警備員に軽く頭を下げ、スピードを上げて道路工事区間を走り去る。こちら側にも行徳側にもマンモス団地がそびえている。道沿いの剪定されたツツジの低木に、赤と白の花がまだらに咲いている。同じような景色ばかり続く。

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巨大な煙突のある江戸川清掃工場の横を通る。東西線の車窓からも見える煙突の正体はこれだった。まさか川向こうにあったなんて。ずっと気になっていた疑問が氷解した。大きいものには惹かれる。

 

 

28:00

鳥が起き出す。空の灰色が溶けていく。

50号線のガード下で眠っていた猫を起こしてしまい、ごめんごめん、と謝る。50号線の橋を渡り、千葉県に戻る。

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南行徳の荒廃した屋形船乗船所を眺めていたら、ジョギング中のおじいさんに話しかけられた。ここ数年間は営業しているのを見たことがないから、潰れちゃったんじゃないかとのこと。それでも浦安のほうでは未だに屋形船が盛んらしい。

朝ランニングの高校生に適当に挨拶をする。新聞配達のバイクが小回りを効かせながら行徳の複雑な路地を往復している。東の空は茜色に染まり出した。

かれこれ2年間妙典に住んだけど、僕の中ではどうでもいい街。思い出は何一つない。行きつけの店もない。今後振り返ることはないでしょう。

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カタクリ